2024年の9月19日から12月1日まで、東京都美術館で日本画家の田中一村の大回顧展が開催されました(画像①)。生前その画業を認められることなく、1976年に奄美大島にて69歳でその生涯を閉じた孤高の画家です。今でこそ数百点もの作品を並べた展覧会で、連日大盛況の人気の画家ですが、元々は、鮫のロケで訪れたNHKの松元ディレクターが彼のデッサンに目を留めて、1984年の日曜美術館で初放映したのが、その名を世に知られたきっかけでした。佐々木店長はその番組は見ていませんが、その翌年1985年に刊行された「田中一村作品集」を、名前も知らないまま衝動買いしました。その大胆な構図と緻密な描写、そして鮮やかな色彩に目を見張ったものです(画像②はその表紙)。
あれから40年。今回、初めて実物の作品を見る機会に恵まれました。平日にも関わらず、チケット売り場や入場口には100人を超える中高年が行列していて(あまり若い人はいない)、入場するまで30分もかかったほどです。3フロアにまたがる会場は人でごった返していましたが、一村8歳から69歳までの311点の作品は見応え充分で、期待以上でした。
作品解説や分析は他の人に譲りますが、今回一番印象に残ったのは、作品の色味が、今まで思っていたものより、しっとりと落ち着いた色だったことです。考えて見れば当たり前ですね。一村は日本画家なのだから、絹本着色とあれば日本画用の色絵具を使っているに決まっていますもんね。でも前述の作品集や、今回購入した図録(画像③はその表紙)などの印刷具合を見ると、結構彩度が高くて鮮やかな色彩なんですね、これが。ですから、一村作品の後期のグラフィカルな構図と相まって、まるでポスターカラーやリキテックスで描かれた商業ポスターをイメージしていたので、今回その実際の色味の落ち着き具合に結構ビックリさせられたものです。やはりこういう美術作品は、実物を見ないといけませんね。
ちなみにこの1985年に買ったB4大型本「黒潮の画譜」田中一村作品集は、当時2,500円でしたが、今、古書店だと3,500円くらいするみたいです(笑)。この本では、代表作の「アダンの海辺」(画像①の絵)を「アダンの木」、同じく「不喰芋と蘇鉄」(画像②の絵)は「奄美の杜(6)」という作品名になっています。当時はまだ、作品名が定まっていなかったんでしょうね。
とても満足のいく観覧でしたが、あまりの人出に疲れて、出口のフォトスポットで自撮りした写真(画像④)は笑っていませんね。失礼しました。でもこの後に、一緒に行った友人たちと焼肉を堪能して、ようやく笑顔が戻りました。
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