原爆実験の放射能による破壊的産物「ゴジラ」をまったく知らないという日本人はあまりいないと思います。したがってそのゴジラの形状を、製作元の東宝が2020年に、特許の1カテゴリーである「立体商標」に出願したのは当然かもしれません。佐々木店長にとってはいまだに1954年の第一作が唯一無二のゴジラなのですが、その後、破壊王から人類の味方、果ては親子出演などコロコロキャラを変えてきたので、どれが「真のゴジラ形状」なのか分かりにくくなっていました。東宝としてもそう思ったのかどうか、出願したのは「シン・ゴジラ」に登場する「第4形態」のゴジラの形状でした(画像①)。
しかし特許庁は当初、「恐竜や想像上の動物をかたどった形状の一類型に過ぎない」と登録を認めず、東宝は5月、審決の取り消しを求めて提訴していたのが、今回知財高裁に認められたことになります。特許庁としては上告は出来ますが、多分商標登録を認めるのではというのが大方の見方です。
はてさて、いかがです? 在職時代、企業ブランディング業務に携わっていた関係で、特許を専門とする弁理士さんと話す機会が多かったのですが、特許庁自身はそもそもよほどのことではない限り、簡単には登録を認めないようです。特に立体商標は歴史が浅いだけ慎重なのでしょう。とは言え、却下の理由が上記の他に、宣伝時に差別化していないとか、東宝とゴジラとの関係の認知度が低い、など少しく苦しい理由に見えます。高裁はそれに対して「ゴジラ・キャラクターの圧倒的な認知度の前では、それらは些末な問題にすぎない」と一蹴しているのが痛快と言えば痛快。この中で「圧倒的な認知度」という判決理由としてはかなり主観的(と思われる)文面を使っているのが、自分的にはなかなか興味を引かれたところでした。
(画像は特許庁プラットフォーム参照)
※この記事を気に入った方は「いいね!」を押して頂けると励みになります。よろしくお願いします。