作家のS・エリザベスが2022年に「The Art of Darkness(暗闇の美術)」という本を出したのですが、その日本語版が2024年に出版されたので早速手に入れました。私たちが潜在的に恐れている暗闇をテーマにした絵画のみを厳選して解説した分厚い本で、持っても重いし、読めばさらに重苦しさを感じる一冊です。その第一章の第一項が「夢と悪夢」。名だたる芸術家が夢から発想を得た傑作を数多く生み出しているように、夢と悪夢は芸術的な想像力に欠かせないものです。もちろん、以前このブログに書いたヒエロニムス・ボスの「快楽の園」も載っています。あの絵も、人間の生み出した悪夢を表現したものですからね。
佐々木店長は寒い北国生まれということもあり、昔から冬の夜に寝ている時に、布団からはみ出した足が冷えると、すぐ金縛りにかかりました。中学生の頃、初めて金縛りにかかった時は、真っ暗な部屋で足下から這い上がってくる得体の知れない重い何かに、死ぬほどの恐怖を味わったものです。その重い何かが胸まで這い上がってきたところで、自分の叫び声で目が覚めました。
ひょっとしてこの本の中に、あの時の怖さを表現した絵画はないか、と探したら・・・ありました。ドイツの画家、フリッツ・シュヴィンベックの「My Dream, My Bad Dream(私の夢、私の悪い夢)」です(画像①)。その時の恐怖と、今でも覚えている胸に感じた物理的な圧迫感が見事に表現されています。・・・本当はこの体験を自分で絵画描写して、ここに載っけるべきなんでしょうけどね(苦笑)。
本の解説によると、胸の上に乗っているこの悪魔的なものは、サキュバス(女夢魔)らしいのですが、日本だと悪魔と言うより妖怪めいたものになりそうですね。相変わらず今でも定期的に金縛りにかかりますが、時々飼っている猫が胸の上に飛び乗ってくる時もあり、これはこれで心臓が止まりそうで、まだ暫くは緊張する夜が続きそうです。
参考:S・エリザベス著・牧尾晴喜訳「The Art of Darkness(暗闇の美術)」/発行:株式会社求龍堂