長年広告制作に携わった身として、やはり新聞広告というのは原点です。広告会社に入社して初めて単独でデザインした広告は、某航空会社のお盆休みの空席情報でした。半二段という小さいスペースでしたが、嬉しくて掲載新聞の切り抜きを故郷の両親に送ったのを覚えています。
今回紹介するのは、店長の生まれるずっと前、昭和3年と13年の書籍広告です。画像①が昭和3年(1928年)の文藝春秋の広告です。この年の出来事と言えば、ディズニー初のアニメ「蒸気船ウィリー」が完成したり、漫画の神様・手塚治虫が誕生したり、昭和天皇の即位式放送のためにNHKの全国放送が始まった年でもあります。
それにしてもこの原稿、手描きですよ、スゴいですね。どこから読んでいいのか分からないのもさることながら、なんといっても唯一のビジュアルが「へのへのもへじ」というのがトンでますね。“近代「剣」座談会”や、“菊池の「半自叙傳」”のタイトルと副文を見ただけで読みたくなります。筆文字やペン文字があまり上手くないところも庶民的で、なかなか秀逸なデザインだと思います。
その反面、昭和13年(1938年)の小学館の学習雑誌広告(画像②)は構成が緻密です。この年は、ヒトラーがヨーロッパのあちこちの小国を併合しまくり、かたや世界初の核実験がニューメキシコで行われた不穏な世界情勢だったのですが、(執筆陣に、陸海空軍の大将がいるとはいえ)これを見る限り、まだ日本にそこまでの危機感は感じられません。吉川英治や西条八十など、そうそうたる執筆者が何を書いているのか、読んでみたいですねぇ。これらの学年別学習雑誌も2000年台に入り、部数低迷から次々と廃刊になってしまったのも、時代の流れでしょうがないかもしれませんが、こういう丁寧に作られた紙の印刷物(新聞や雑誌)が次々と消えていくのは、昭和生まれの店長としては寂しい限りです。
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